法律判例情報 > マスターリース

敷金に質権が設定された場合における賃借人たる破産管財人

<事案>
・建物の賃借人が金融機関のため、賃貸人に差し入れた敷金に質権を設定。
・その後賃借人が破産し、破産管財人と賃貸人が未払賃料を敷金に充当する旨合意。
・金融機関から貸金債権を譲り受けた債権者が破産管財人に対し、不当利得返還請求。
・破産財団は未払賃料を支払うのに十分潤沢であった。

<判例要旨>
破産者は質権の目的物たる敷金を維持する義務があり、破産管財人もそれを承継する。財団債権としての未払賃料を支払うに十分足りる破産財団がある場合、破産管財人は未払賃料を随時弁済する義務があるとして不当利得返還請求を認容した原判決を維持。

<コメント>
破産管財実務において、賃貸人と未払賃料等に敷金を充当する旨合意をすることはしばしば行われています。今後破産管財人としては財団が潤沢である場合において、敷金に質権が設定されているときには注意が必要です。

マスターリース契約においてサブリース賃料連動条項が定められている場合のフリーレントの扱い

東京地裁判決 平成18年8月31日 金融商事判例1251-6

<事案>
1 X、Yに対し建物をマスターリース
(1)マスターリース賃料ははサブリース賃料の80%相当とする(賃料連動条項)。
(2)空室時のマスターリース賃料は直前のサブリース賃料の60%相当とする。

2 Y、Z(転借人)に対し、3ヶ月間のフリーレントでサブリース。

3 X、Yに対し、フリーレント期間のマスターリース賃料がゼロ円になるのは不当であるとして賃料を請求

<判旨>
1 フリーレントはサブリース賃料の免除である。賃料連動条項がある場合、賃貸人に著しい不利益が生じない等の特段の事情がない限り、賃貸人には対抗できない。

2 本件は以下の理由により賃貸人に著しい不利益を及ぼすものではない。
(1)賃貸期間2年3ヶ月に対し、フリーレント期間3ヶ月であること
(2)本件のマスターリース賃料を平準化すると直前のマスターリース賃料の96.4%に相当すること
(3)このサブリース賃料は付近の平均月額賃料と近似すること
(4)フリーレントによらなかった結果、サブリース賃料の減額を余儀なくされることもありうること

3 本件フリーレントは賃貸人との関係で信義則に反しない。

4 本件空室補償条項は、サブリース契約が終了し、新たにサブリース契約が締結されるまでの間、賃貸人に一定の収益の確保を保証するとともに、サブリース賃料が得られないにもかかわらず、マスターリース賃料の支払い義務を賃借人に課すことにより賃借人が転借人を獲得するよう促進することを企図したものである。よって、現にサブリース契約が成立している本件において空室補償条項は適用されない。
以上