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会社更生法39条と賃貸借契約の解除

東京地裁平成10年4月14日 判例タイムズ1001号267頁

<事案> 
1 建物の賃借人について、会社更生手続開始の申立がなされ、会社更生法39条に基づき弁済禁止の保全命令が発令。
2 賃貸人が未収賃料について催告。
3 保全管理人は弁済禁止の保全命令があることを理由として、支払拒絶。
4 賃貸人、保全管理人に対し、解除の意思表示


<判旨>

 会社更生法39条の規定に基づき債務弁済禁止の保全処分が命じられたときは、これにより会社はその債務を弁済してはならないとの拘束を受けるのであるから、右保全処分前に生じた賃料の未払賃料の支払を求める催告が保全処分後にあった場合には、会社はその債務を弁済してはならないのであり、したがって、会社が右催告に応じて支払をしないことに違法性がないから、賃料の支払の遅滞を理由とする賃貸借契約の解除の意思表示をしても、契約解除の効果は発生しない。

 債務弁済保全処分が命じられる前に、既に賃料の不払が賃貸借契約上の信頼関係を破壊する程度に達しており、賃料支払の催告をすることなく契約解除をし得る場合には、Xは保全処分又は更生手続開始決定後であっても、保全管理人又は更生管財人に対し、契約解除の意思表示をすることにより、賃貸借契約を解除することができる。


敷金に質権が設定された場合における賃借人たる破産管財人

<事案>
・建物の賃借人が金融機関のため、賃貸人に差し入れた敷金に質権を設定。
・その後賃借人が破産し、破産管財人と賃貸人が未払賃料を敷金に充当する旨合意。
・金融機関から貸金債権を譲り受けた債権者が破産管財人に対し、不当利得返還請求。
・破産財団は未払賃料を支払うのに十分潤沢であった。

<判例要旨>
破産者は質権の目的物たる敷金を維持する義務があり、破産管財人もそれを承継する。財団債権としての未払賃料を支払うに十分足りる破産財団がある場合、破産管財人は未払賃料を随時弁済する義務があるとして不当利得返還請求を認容した原判決を維持。

<コメント>
破産管財実務において、賃貸人と未払賃料等に敷金を充当する旨合意をすることはしばしば行われています。今後破産管財人としては財団が潤沢である場合において、敷金に質権が設定されているときには注意が必要です。