建物明渡請求事件の手続の流れと費用
1 手続の流れ
建物明渡しに関して法的手続をとる場合、通常以下のような手続を進めることになります。
(1)占有移転禁止の仮処分手続
賃借人を建物から退去させるためには、賃借人に対して建物明渡等請求訴訟を提起し、「賃借人は賃貸人に建物を明け渡せ」という判決を受け、強制執行の手続を行う必要があります。
この点、建物明渡しの判決の効力は判決の当事者にしか及ばないのが原則ですので、明渡しの勝訴判決を得たとしても、訴訟時に被告とした賃借人とは別の人物が建物を占有していた場合には、当該人物に対しては判決の効力が及ばず、強制執行ができなくなってしまいます。こうした不都合を回避するため、訴訟提起前に占有者を確定して、仮に賃借人と別の人物が建物に入り込んだとしてもそのまま強制執行をすることが出来るようにするのが占有移転禁止仮処分という手続です。
占有移転禁止の仮処分手続は、裁判所の執行官が現地に赴き、室内に立ち入ることを予定しておりますので、賃借人に一定の圧力を掛けることができ、これを契機として任意の立ち退きが実現される場合もございます。
(2)訴訟手続
次に、建物明渡等請求訴訟を裁判所に提起することになります。訴訟を提起すると、約1か月後に審理を行う期日が定められ、双方の主張、立証を行い、判決となります。
なお、訴訟手続中、賃借人や連帯保証人との話し合いにより、明渡しや未払賃料等の支払いについて条件が整う場合には、訴訟上の和解を行うことが可能です。和解につきご検討いただく場合には、条件等をご連絡させていただきます。
(3)強制執行手続
訴訟により勝訴判決が得られた場合には、判決に基づき、強制的に賃借人から建物を明け渡してもらう強制執行手続を行うことになります。
また、未払賃料等につきましては、差押手続を行い回収することが考えられます。もっとも、現実に未払賃料等を回収できるかどうかについては、連帯保証人等の資力にかかっており、場合によっては費用倒れとなる可能性がございますので、事前に連帯保証人等の資力の調査を行うことをお勧めいたします。
2 弁護士の費用等
本件にかかる費用等についてご説明いたします。
(1)建物明渡等請求手続
当事務所では、建物明渡等請求手続に関する費用を以下のとおり定めております(いずれも消費税
を別途ご負担いただきます。)。
ア 通常のもの定型的なもの
占有移転禁止の仮処分 手数料20万円
建物明渡等請求訴訟 着手金 0円
報酬 20万円
建物明渡強制執行 手数料10万円
イ 複雑なもの
占有移転禁止の仮処分 手数料30万円
建物明渡等請求訴訟 着手金30万円
報酬 30万円
建物明渡強制執行 手数料15万円
※ご依頼者のご希望により、仮処分手続は行わず、訴訟手続から行う場合につき
ましては、訴訟手続の着手金を10万5000円(消費税込み金額)とさせてい
ただきます。
※※報酬は、現実に建物明渡しが完了した時点で請求させていただいております。なお、訴訟提起を行うことなく、任意交渉・仮処分手続の段階で、建物明渡しが実現した場合の報酬は10万5000円(消費税込み金額)とさせていただきます。
「複雑なもの」とは、①占有者が確定できないもの、②暴力団関係者の占有が疑
われるもの、③その他明渡しの実現に煩雑な処理を要するもの等と定めておりま
すが、個々のケースに応じて通常のもの、複雑なもの、中間的なものであるか検
討した上で、最終的な金額を提示させていただきます。
(2)未払賃料等の回収
建物明渡等請求訴訟により、賃借人を建物から退去させることができますが、未払賃料等を回収することまでは期待できません。仮に、当方が任意あるいは法的な手段により賃料の回収をした場合には、別途成功報酬を請求させていただいております。
報酬の計算方法ですが、現実の回収額を以てその事件にかかる経済的利 益として、下記の「報酬算定一覧表」に基づき報酬を算定させていただいております(なお、差押手続をとる場合には、申立手数料として別途10万5000円(消費税込み金額)をお願いいたします。)。
【報酬算定一覧表】
経済的利益 報酬
300万円以下の部分 15%
300万円を超え、3000万円以下の部分 9%
3000万円を超え、3億円以下の部分 6%
3億円を超える部分 4%
(3)実費
法的手続を行う場合には、各手続におきまして印紙、郵券、予納金等の実費がかかります。実費につきましては、弁護士に手続を依頼しなくてもかかる費用ですので、別途ご負担いただくことになります。
各手続にかかる主な実費についての目安は以下のとおりです。
ア 仮処分手続
①申立費用(2000円)
②担保金額(賃料の約2~3か月分)※後に返還されます。
③仮処分予納金(約3万円程度)
④仮処分補助者、鍵屋(約5万円)
イ 訴訟手続
①印紙代(訴訟物の価格によりますが、数万円程度)
②郵便切手(約8000円程度)
ウ 強制執行手続
①執行予納金(約6万5000円程度)
②強制執行補助者、鍵屋(約5万円、1回目)
③強制執行補助者、鍵屋(約5万円、2回目)
④強制執行のための車輌、倉庫代、人夫等
(建物面積等によって異なり、通常は30万円以上となります。事案毎に業者より見積書を提出いたします。)